デザイナーはFigmaの次に何をするか|作れるようになった後の時間の使い方
成果物が静止画から動くものへ変わりつつあります。代替されない専門性はどこか、そして実装の説明に使っていた時間をどこに回すべきかを整理します。
デザイナーがFigmaで画面を作り、エンジニアに渡して実装してもらう。長く続いてきたこの分業が、変わりはじめています。デザインしたものを、自分で動く形にできるようになったからです。 では、デザイナーの仕事はどうなるのか。何に時間を使うべきなのかを整理します。
まず結論
Figmaが要らなくなるわけではありません。ただし、成果物が「静止画」から「動くもの」に変わりつつあります。
そして、実装に使っていた説明の時間が空きます。その時間をどこに使うかが、これからの分かれ目になります。
結論としては、検証とマーケティングに使うのが合理的だと考えています。理由は後述します。
何が変わったのか
これまでの流れはこうでした。
これまで
- 1アイデアを考える
- 2エンジニアを探す
- 3作りたいものを説明する
- 4数十万〜数百万円を払う
- 5数週間〜数か月待つ
いま
- 1アイデアを考える
- 2AIに「こんなものを作りたい」と相談する
- 3その日のうちに動くものができる
Figmaで画面を作り、動きは注釈で説明し、エンジニアに渡す。出てきたものを見て「押したときの反応が違う」と伝え、直してもらう。
このやりとりの多くは、静止画では動きを伝えきれないことから生まれていました。
今は、デザインしたものを自分で動く形にして、触れる状態で渡せます。
Figmaがなくなるわけではない理由
誤解を避けるために書いておきます。Figmaの役割は残ります。
| 用途 | 引き続きFigmaが向く | 動くものにしたほうがいい |
|---|---|---|
| 発想を広げる | ◎ 大量に試せる | ✕ 遅い |
| 全体の構成を考える | ◎ 俯瞰しやすい | △ |
| 配色・余白の検討 | ◎ 比較しやすい | △ |
| 動きの確認 | ✕ 伝わらない | ◎ |
| 使いやすさの検証 | △ | ◎ 実際に触れる |
| 開発者への引き渡し | ○ | ◎ 認識のズレが減る |
考える段階はFigma、確かめる段階は動くもの。 この使い分けが現実的です。
動くものにすると、何が変わるか
1. 使いやすさを本当に検証できる
静止画を見せて「使いやすそうですか」と聞いても、正確な答えは返ってきません。人は実際に触るまで、どこで迷うかわからないからです。
動くものを渡して、黙って見ていると、予想していなかった場所で止まります。 この情報は静止画からは得られません。
2. 説明の時間が消える
「ここを押すとこうなって、読み込み中はこう表示されて」という説明が不要になります。触ってもらえば伝わります。
3. 判断が早くなる
社内で意見が割れたとき、両方作って触ってもらえば決着します。 議論より速いことが多いです。
それでも残る、デザイナーの専門性
作れるようになっても、代替されない部分があります。ここを見誤ると、方向を間違えます。
何を作らないか決めること。 機能を足すのは簡単ですが、削る判断には基準が要ります。
情報の優先順位をつけること。 何を大きく見せ、何を隠すか。この判断は、AIには任せられません。
言葉を選ぶこと。 ボタンに書く一言で、押される割合は変わります。
一貫性を保つこと。 画面が増えたときに、全体としてまとまりを保つ設計。
これらは「作れるかどうか」とは別の能力です。 そして、作れる人が増えるほど、この差が目立つようになります。
空いた時間をどこに使うか
ここが本題です。
実装の説明に使っていた時間が空きます。多くのデザイナーが、その時間をさらに細かいデザイン調整に使っています。 それも悪くはありませんが、効果としては小さいと考えています。
理由は単純で、どれだけ良いものを作っても、知られなければ使われないからです。
63%
AIコーディングツールの利用者のうち、開発者ではない人の割合です。作る側の人口が急増した結果、「良いものを作れば見つけてもらえる」という前提が成り立たなくなりました。
使いどころ1:検証
作ったものを、実際に人に使ってもらう工程です。
これまでは「実装が終わってから」しかできませんでした。今は企画段階でできます。間違った方向に進む前に気づけるようになります。
使いどころ2:マーケティング・SNS
デザイナーはこの領域と相性がいいと考えています。理由は3つあります。
- 見せ方の判断ができる — 何をどう見せると伝わるかは、まさに専門領域です
- 制作過程が素材になる — デザインの試行錯誤は、そのまま発信の内容になります
- 一貫した世界観を作れる — サービスと発信の見え方を揃えられます
具体的な進め方は作れるようになった。次に差がつくのは「届ける力」にまとめました。
使いどころ3:事業側の判断
「何を作るか」の議論に、最初から入ることです。
動くものを出せる人は、企画の初期段階で呼ばれるようになります。 ここに入れるかどうかで、関われる範囲が変わります。
どこまで自分でやり、どこから任せるか
作れるようになっても、全部を自分でやるべきではありません。
自分とAIでできることが多い
- 自分や友達だけで使うツール
- 学校や会社の中だけで使うツール
- アイデアを試すための試作品
- 利用者が少ない小さなサービス
専門家の知識が重要になる
- 他人の個人情報を預かる
- お金のやりとりをする
- 利用者が一気に増えたとき
- 動かなくなったときの復旧
試作品までは自分で。本番はエンジニアに。 この線引きが基本です。
引き渡しの具体的な進め方はプロトタイプまで作って、あとはエンジニアに渡すに書きました。
デザイナーが最初に打つ指示
「動く形にする」と言っても、具体的な頼み方がわからないと始まりません。
過去のデザインを動く形にする
完成形がわかっているので、練習に最適です。
デザインした画面を、実際に触れる形にしたいです。プログラミングは初めてです。
画面の構成:
・(要素を上から順に説明。例:上部にロゴ、中央に検索欄、下に一覧)
動き:
・(押したときにどうなるかを説明)
条件:
・スマホでの表示を優先してください
・データは仮のもので構いません
・見た目の再現を優先してください
Figmaの内容を文章にして貼るのがコツです。「上から順に何があるか」を書けば伝わります。
細かく調整する
出てきたものを見て、直したいところを伝えます。
・見出しをもう少し大きく、余白を広めに
・ボタンは画面下に固定して、片手で押せるようにして
・読み込み中は、何か表示されるようにして
最後の項目のような「間の状態」は、静止画では表現できません。 ここを自分で確かめられるのが、動く形にする価値です。
検証に使う
このプロトタイプを、5人に触ってもらって使いやすさを確かめたいです。
どこで迷いそうか、事前に指摘してもらえますか。
AIの指摘は参考程度で構いません。 本番は実際に人に触ってもらうことです。
何から始めるか
- 1
自分用の小さな道具を1つ作る
作業を楽にするものが題材として適しています。失敗しても誰も困りません。
- 2
過去に作ったデザインを、動く形にしてみる
完成形がわかっているので、指示が出しやすくなります。
- 3
動くものを、社内の検討で使ってみる
静止画のときと反応がどう違うかを体感します。
- 4
検証に時間を回す
作る速度が上がったぶん、使ってもらう工程に時間を使います。
よくある質問
Q. コードを書けないとダメですか? A. 書ける必要はありません。日本語で「この画面をこう動くようにして」と伝えれば作れます。詳しくはClaude Codeって何?をご覧ください。
Q. エンジニアの仕事を奪うことになりませんか? A. 試作品と本番は別物なので、奪うことにはなりません。むしろ説明の往復が減るので、歓迎されることが多いです。
Q. Figmaはもう使わなくていいですか? A. 使います。考える段階ではFigmaのほうが速いです。確かめる段階で動くものに変える、という使い分けです。
Q. デザインの質は下がりませんか? A. 下がる可能性はあります。AIに任せると、無難な見た目に寄る傾向があります。だからこそ、何を作らないか、どう見せるかを決める力の価値が上がります。
Q. マーケティングの経験がありません A. 最初は誰でもそうです。制作過程を発信するところから始めれば、経験がなくても続けられます。
まとめ
- Figmaは残る。ただし成果物が静止画から動くものへ変わりつつある
- 使い分けは、考える段階はFigma、確かめる段階は動くもの
- 代替されないのは、何を作らないか決める・優先順位をつける・言葉を選ぶ・一貫性を保つ力
- 空いた時間は、検証とマーケティングに使うのが合理的
- 試作品までは自分で、本番はエンジニアに。 この線引きは変わらない