企画職やデザイナーも「自分で作る」時代になる?
作れる人と作れない人の境界が動いています。企画・デザイン・営業それぞれの仕事がどう変わるのか、そして変わらない部分は何かを整理します。
企画書で説明するより、動くものを見せたほうが速い。当たり前のようですが、これまでは選べない選択肢でした。考える人と作る人の境界が動きはじめた今、企画・デザイン・営業それぞれの仕事がどう変わるのかを整理します。
まず結論
結論として、企画職やデザイナーが「自分で動くものまで作る」ことは、現実的な選択肢になりました。
ただし「エンジニアの仕事を全部やる」という意味ではありません。試作品を自分で作れるようになる、というのが正確なところです。
そしてこの変化は、仕事が奪われる話ではなく、伝え方が変わる話だと考えています。
何が変わるのか
これまで、企画職やデザイナーの仕事は「作る人に渡すところ」で一度止まっていました。
- 企画書を書く → エンジニアに説明する → 作ってもらう → 違うものが出てくる → 説明し直す
この往復に、多くの時間が使われていました。頭の中にあるものを、言葉と絵だけで正確に伝えるのは、そもそも難しいからです。
今は、この往復を減らせます。
これまで
- 1アイデアを考える
- 2エンジニアを探す
- 3作りたいものを説明する
- 4数十万〜数百万円を払う
- 5数週間〜数か月待つ
いま
- 1アイデアを考える
- 2AIに「こんなものを作りたい」と相談する
- 3その日のうちに動くものができる
企画した本人が動くものを作れると、「こういうものです」と実物で見せられます。 言葉で説明するより、圧倒的に速く正確です。
職種ごとに見た変化
企画・プロダクトマネージャー
いちばん変化が大きい職種だと思います。
これまでは「作ってもらう前提」で企画を考える必要がありました。実現できるかどうかがわからないまま、資料を作っていた人も多いはずです。
自分で試作品を作れると、企画の段階で「これは実現できる/これは重い」がわかります。 検討の質が変わります。
デザイナー
デザインした画面が、実際に動くところまで自分で作れるようになります。
これまでは「静止画のデザイン」を渡して、動きの部分は説明で補っていました。実際に触れるものを作れると、押したときの反応や、読み込み中の見え方まで自分で確かめられます。
営業・事業開発
顧客と話しているときに「こういうものがあれば買う」と言われたら、その週のうちに試作品を見せられます。
提案の説得力がまったく変わります。
経営・起業を考えている人
アイデアを、資金を集める前に検証できます。詳しくは起業するなら、エンジニアを探す前に自分でMVPを作ってみようで書きました。
それでも分業が消えない理由
ここが重要です。「全員が作れるようになったから、エンジニアは要らない」とはなりません。
理由は、作るものの性質が違うからです。
自分とAIでできることが多い
- 自分や友達だけで使うツール
- 学校や会社の中だけで使うツール
- アイデアを試すための試作品
- 利用者が少ない小さなサービス
専門家の知識が重要になる
- 他人の個人情報を預かる
- お金のやりとりをする
- 利用者が一気に増えたとき
- 動かなくなったときの復旧
企画職やデザイナーが自分で作れるのは、主に左側です。試作品、社内ツール、小規模なもの。
一方で、実際に多くの人が毎日使うサービスを、止めずに、安全に動かし続けるのは右側の仕事です。ここには別の専門性があります。
実際、調査ではこういう数字が出ています。
48%
AIが書いたコードを「必ず確認している」開発者の割合です。裏を返せば、半数以上は確認しないまま進めていることになります。確認する目の重要性は、むしろ上がっています。
作れる人が増えるほど、「これで大丈夫か」を判断できる人の価値が上がります。
職種別・最初に打つ指示
抽象的な話で終わらせないために、すぐ試せる指示を職種別に挙げます。
企画・プロダクトマネージャー
企画中のサービスの試作品を作りたいです。プログラミングは初めてです。
本番で使うものではなく、社内の検討で使うためのものです。
(PRDや企画書の内容を貼り付け)
中心となる利用者の流れを1本だけ、画面として作ってください。
データは仮のもので構いません。
「PRDを貼り付ける」だけで動くものになります。 ここが従来と決定的に違う点です。
デザイナー
デザインした画面を、実際に触れる形にしたいです。
・(画面の構成を説明、またはFigmaの内容を文章化して貼る)
・ボタンを押したときの動きも再現したい
・スマホでの表示を優先してください
見た目の再現を優先してください。データは仮で構いません。
動きの検証は、静止画ではできません。 ここが動くものにする最大の価値です。
営業・事業開発
お客様に見せる提案用の試作品を作りたいです。プログラミングは初めてです。
・(提案したい仕組みを説明)
・実際に触って動きがわかる状態にしたい
・データは仮のもので構いません
1時間程度で作れる範囲に絞ってください。
「1時間程度で作れる範囲に絞って」と伝えると、提案に間に合う規模にまとめてくれます。
共通の注意
どの職種でも、実データは使わないでください。
実在の顧客データは使わないでください。
サンプルデータを作って使ってください。
試作品の段階では、この一言で事故を防げます。
今からできること
いきなり大きなものを作ろうとしなくて大丈夫です。
- 1
自分の業務で面倒なことを1つ選ぶ
毎週やっている手作業がおすすめです。
- 2
それを楽にする小さな道具を作る
自分だけが使うものなので、失敗しても困りません。
- 3
自分で1週間使ってみる
使うと、必要な機能と不要な機能がはっきりします。
- 4
チームの誰かに使ってもらう
ここで初めて「他人が使う」ことを考えます。
4つ目まで進むと、「どこから専門家に相談すべきか」が体感でわかるようになります。 これが、いちばん価値のある学びだと考えています。
よくある質問
Q. エンジニアに嫌がられませんか? A. 逆のことが多いです。何がしたいのかが動くもので伝われば、説明の往復が減ります。ただし**「作ったから本番で使って」と丸投げするのはやめてください。** 試作品と本番は別物です。
Q. 中途半端に知ると危ないのでは? A. その心配は正しいです。だからこそ「どこからは自分でやらない」を先に知っておくことが大事になります。
Q. どれくらいで作れるようになりますか? A. 小さな道具なら、初日で動くものができます。人に使ってもらえる状態にするには、もう少しかかります。
まとめ
- 企画職・デザイナーも試作品を自分で作れる時代になった
- 変わるのは伝え方。言葉ではなく動くもので伝えられる
- ただし分業は消えない。試作品と、安全に動かし続けるサービスは別物
- 作れる人が増えるほど、判断できる人の価値は上がる
- まずは自分の業務の面倒ごとを1つ、小さく作ってみる